こんにちは!管理人のすのうです。
恒例の研修日報シリーズです。今回のテーマは「茎枯病」です。
茎枯病はアスパラの病気です。以前、もふもふ農園を「豪雨」と「雹(ひょう)」が襲いました。そこで病気に感染したと思われます。今回は「アスパラ農家の1日」を時系列で紹介し、テーマである「茎枯病」を重点的に説明していきます。
※「茎枯病は午後の作業内容です。早く内容を知りたい場合は目次からジャンプしてください。」
今回も過酷な1日でした…
これがアスパラ農家の1日だ!
アスパラ農家の1日
- 4:30起床準備してもふもふ農園に移動
- 5:00アスパラ収穫約35㎏のアスパラを収穫
- 7:45アスパラ選別選別機でアスパラを仕分け
- 8:30朝食休憩エネルギーをチャージ
- 9:30草むしり14棟の草むしりを実施
- 12:00昼食休憩エネルギーをチャージ
- 13:00茎枯病対策病気茎の撤去
- 15:30アスパラ収穫約15㎏のアスパラを収穫
- 16:45アスパラ梱包明日出荷の下準備
- 17:15作業終了片付けと帰宅準備
アスパラ農家の1日は大変です。早朝から収穫をして、アスパラハウス内の管理も必要です。特に今は「夏アスパラ」の収穫量が右肩上がりです。早朝のアスパラ収穫は約35㎏、夕方のアスパラ収穫は全てのハウスを回り切れていない状態で約15㎏でした。
まだピークじゃないぞ。
そんなアスパラ研修、過酷な1日の記事です。
アスパラ研修|早朝の部
いつものように1日の行動をまとめていきます。今回は具体的に「収穫」「出荷」「草むしり」「茎枯病対策」を行いました。
アスパラ農家の朝は早く、早朝より収穫作業を行います。この日は4:30に起床してもふもふ農園に向かいます。
早朝の部|アスパラ収穫
夏アスパラの兆しを見せて約2週間、2週間前は約10㎏の収穫量でしたが、早朝のアスパラ収穫では約35㎏を収穫しました。夕方にも収穫を行いますので1日としての収穫量はさらに多くなります。
14棟のアスパラ収穫のうち、つーさんに3棟手伝ってもらいました。残り11棟を収穫するのにかかった時間は「2時間45分」でした。
収穫したら、もちろん選別作業が待っています。収穫したアスパラを選別機で27㎝の規定サイズにカット・①~⑤番とサイズ規格外に仕分けしていきます。
早朝の部|アスパラ選別
夏アスパラのシーズンはハードスケジュールです。以前のように早朝に収穫したアスパラを選別して梱包・出荷していると直売所の開店時間に間に合いません。開店前に持っていくアスパラは前日の夕方収穫分を使います。
規模から考えると人を増やすべき!
せめて収穫2人、仕分け・梱包・出荷1人の計3人は欲しいところです。
断る!
サブさんもつーさんも頑固です(笑)まぁ、考えがあってのことでしょう。
写真の下側はカットしていない30㎝~50㎝で収穫したアスパラです。
時刻は8:30、これで早朝の部が終了しました。朝食と作業内容の確認を行い午前の部に入ります。
アスパラ研修|午前の部
午前中の作業内容としてアスパラハウス14棟の「草むしり」を行います。新規のアスパラハウス1棟はつーさんにて除草作業済と聞きましたので残りは14棟となります。
午前の部|草むしり
やることは以前の研修内容と同じです。アスパラのかん水用ホースの周辺に生えた雑草をむしっていきます。この作業を怠るとホースからの水が遮られ、必要な場所に水やりができません。「草むしり」は農家の基本です。
「草むしり」記事は過去に投稿していますので、研修の詳細は省きます。
地道にむしり、14棟が終わったのが12:00です。多少、余裕があったため通路やビニールハウス外の目立つ雑草も除去しました。
12:00から昼休憩です。30分のごはんタイムと30分の仮眠でエネルギーをチャージします。
アスパラ研修|午後の部
いよいよ本題の茎枯病の話です。アスパラの病気は「茎枯病」「斑点病」「褐斑病」や土壌病害の「株腐病」「立枯病」「疫病」、アザミウマやヨトウムシなどの病害虫被害と多くあります。
今回の茎枯病の発端はおそらく「豪雨」と「雹」です。もふもふ農園のアスパラハウスを直撃して被害が出ました。
雹により立茎した親茎にダメージが、豪雨によって雨水が跳ね返り「茎枯病」を発症したと考えられます。
午後の部|茎枯病対策
最初に作業内容を簡単にまとめます。今回は茎枯病が出ているため、病気になった親茎を撤去しました。撤去方法は「病気枝を引き抜き、アスパラハウスから遠い位置に移動させる」作業になります。
遠い位置なのには理由があります。この茎枯病というのは「感染」していくからです。
茎枯病|発生原因
茎枯病は「ホモプシス属菌」と言う病原菌が悪さをして発症します。この病原菌の胞子が雨水の跳ね返りによってアスパラの頭部に入り込み、感染してしまいます。
主な予防方法として施設化が挙げられます。要はビニールハウスですね。雨が降っても雨水が跳ね返らないハウス栽培によって茎枯病のリスクは大幅に低減できます。
しかし、発生してしまった。
ビニールハウス栽培だからと言って絶対に発生しない訳ではありません。今回のように豪雨で隙間からの跳ね返り、ハウス開口部からの跳ね返り、そもそもかん水チューブ(散水チューブ)の水やりでも発生する可能性があります。
続いて茎枯病の目視での確認方法と特徴を見ていきましょう。
茎枯病|特徴
茎枯病は菌の侵入から1ヵ月程度で特徴が出てきます。特徴としては「くさび形の病斑」です。初期の病斑は小粒の白色~茶褐色の病斑ですが、拡大を続け、大きな病斑となっていきます。
くさび型の病斑が広がっています。茎が枯れてボロボロになっていきます。この枯れた茎の中では病原菌が増殖しています。
中はスカスカです。手で簡単に折れ、病斑部分は完全に枯れてしまっています。
茎枯病|対処
発生が確認された茎は撤去が必要です。重要なポイントは「感染した部分の撤去」です。
基本的に進行が末期ではない場合、病斑がでた下部分を撤去してハウスの外に持ち出します。上部はネットで絡まっていたり、他の立茎親茎の枝と絡んでいたりするので枯れるまで放置するのが一般的です。もふもふ農園では慎重に引き抜き全て持ち出しています。
1本の親茎をだいたい2~3分割ほどして持ち出しています。
無理に引き抜くと他の親茎を折ってしまう。
ちなみにアスパラ親茎の下部に感染が見られた場合、かなり下から引き抜く必要があります。地上部から鎌などで刈り取る場合は病原菌が残ってしまいます。
茎枯病|対策を怠ると
茎枯病を放置すると生産性に大きな影響があります。再度確認しておきますが、アスパラガスは多年生の野菜です。1回限りの収穫ではなく10年以上収穫できる大きな収入源です。
この病害は発生年の生産性を低下させるだけでなく、「翌年以降」の生産性にも大きな影響を与える厄介な病気です。
茎枯病が進行すると病斑から「胞子」が散出して次に萌芽(ほうが)する若茎や葉に感染していきます。まん延した病原菌は土壌・茎の中に残り続け、翌年の若茎にも影響し、恒常的に発生する病害となってしまいます。
茎枯病は1回や1年で終わらず、増殖を続けてアスパラ株を侵食していきます。
必ず予防処置・対策・対処を行いましょう。
茎枯病|病気茎の撤去と再立茎
最初にも伝えましたが、病気茎は撤去が必要です。茎枯病の進行した親茎には病原菌の柄子核が形成されています。これが翌年の感染源となるため、必ず別の場所に持ち出して処分します。外に持ち出した病気茎はある程度乾燥させ、焼却します。注意点はアスパラハウスより遠い位置に置きます。
ちなみにアスパラ農家では常識ですが、翌年のアスパラ収穫をむかえるまでに地表部分のバーナー焼却作業があります。このバーナーでの焼却作業にて残茎に残った病原菌を死滅させていきます。
追加立茎にも注意が必要です。茎枯病に感染した親茎を撤去するともちろんハウス内の「光合成できる親茎」の量は減少します。すぐにでも追加立茎したいところですが、雨のない時期を選ぶことが重要です。ビニールハウス栽培ではまだマシですが、梅雨の期間の追加立茎は病原菌の再感染リスクが高まります。
病気茎を撤去して追加立茎することはアスパラの根(貯蔵根)の養分を多く消耗します。その親茎が再感染した場合、養分が無駄になってしまいます。立茎時期に注意しましょう。
茎枯病|薬剤防除
茎枯病の予防対策として「薬剤防除」が有効です。タイミングとしては立茎直後から側枝が展開するまで薬剤散布を集中して行い、特に雨が降った後の薬剤散布が有効です。
一応ですが「防除」の説明をしておきます。防除とは農作物に悪影響を与える病害虫や雑草を防いだり除くことを言います。今回に当てはめると薬剤による「病害の予防」ですね。
茎枯病は厄介な病害です。放置するとアスパラが完全に枯れて他のアスパラへの感染や翌年の収穫量に大きな影響があります。早期に対処してまん延防止に努めましょう。
午後の部|アスパラ収穫
結局、茎枯病にかかった親茎撤去は5ハウスしかできませんでした。このまま続けるべきですが、夏アスパラの収穫を行うため中断しました。夏場のアスパラは1日で10㎝以上伸びます。早朝のアスパラ収穫で規定サイズに満たなかったものが夕方の収穫では規定サイズ以上に伸びている。アスパラの成長力はすごいです。
夕方のアスパラ収穫は現状、主要ハウス7棟をまわります。収穫のピーク時は早朝・夕方各14棟を収穫しますが、約4時間かかります。
午後の部|アスパラ梱包
夕方に収穫したアスパラは次の日用です。状況に応じて農協や直売所、料亭などに出荷します。今回の収穫分は農協出荷として鮮度保存対策をして保管します。
アスパラは鮮度が命。アスパラガスの約93%は水分です。保管方法を間違うと、たった1日でも水分や食味が大きく低下してしまうデリケートな野菜です。低温での保管が栄養素の維持も含めて効果的です。
アスパラ梱包と保管を行い、アスパラ農家の1日が終了です。
午後の部|作業終了
本来ならアスパラ収穫や茎枯対策をまだやる必要がありますが、実家での「甥っ子誕生日会」が予定されていますので早めに作業終了です(笑)
もふもふ農園の戸締りとサブローCEOへの挨拶をして帰宅です。
お疲れさまでした。
茎枯撤去の残りはいつやるんだ?
茎枯病は他のハウスでも発生しており、早期の対策が必要です。
つーさんは大豆の準備で忙しくなかなか手が回りません…様子を見ながら少しずつ進めていきます。
まとめ
「茎枯病」は感染直後の変化がないため厄介です。進行してはじめて目視で確認できますが感染茎の撤去が必要となります。
感染が進行すると他のアスパラにも二次感染し、最後はハウス全体にまん延。その年だけでなく翌年の収穫にも影響します。感染茎の撤去や事前の防除により対策をする必要があります。
感染の原因として雨水の跳ね返りが挙げられますが、ビニールハウス栽培でも安心はできません。サイドの開口部から雨水の侵入・上部の開口部から雨水の侵入による感染、かん水チューブ(散水チューブ)による水の跳ね返りなど感染する原因は多々あります。
アスパラ農家は「茎枯病」と上手く戦っていく必要があります。
以上が「アスパラ農家の研修日報|茎枯病」の報告となります。
今回も最後まで読んでいただき感謝です。
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