こんにちは!管理人のすのうです。
今回のテーマは「ハモグリガとカイガラムシ」です。記事を投稿したきっかけはレモンの生育状態をチェックしていたら異変に気付き、病害虫が確認されたからです。発生した病害虫はハモグリガとカイガラムシで、害虫の説明や症状、うちが行った対策も合わせて記事にまとめました。
この記事を書いている11月上旬は気温も低くなり肌寒い日も増えてきました。春から夏にかけてレモンにはアゲハ蝶の幼虫が大量に発生して食害を受けていましたが、最近はほとんど見なくなりました。ここからは冬前にかけてたくさんの栄養を蓄えるだろうと安心していましたが異変に気付きました。
異変その1、蟻の発生。
蟻(アリ)がレモンの木に登っている…、こういう時は厄介なアイツを思い出します。
それは蟻の友だち「カイガラムシ」です。奴にはうちの大事に育てていた不知火(しらぬい)を枯らされたり、果実が収穫できないほど食害を受けたり、すす病の大発生に悩まされたりしました。
そもそも、なぜ蟻が木に登るのでしょうか?答えは簡単です。そこに蟻にとってのメリットがあるからです。この話の詳しい解説は後ほどしていきます。
そしてもう1つの異変がこちらです。
レモンの葉っぱがボロボロです。ボロボロになった葉っぱをよく見るとクネクネと1本の線が繋がっています。まるで絵を描かれたような…
この症状は農家さんなら絶対に1度は見たことがあると思います。いたるところに生息し、葉っぱの中に潜り込み内側から食べつくす害虫「ハモグリバエ」「ハモグリガ」です。食害の見た目が絵を描いたように見えることから別名「エカキムシ」とも呼ばれています。
葉っぱの中を食害するハモグリガ、木に寄生して汁を吸うカイガラムシ、厄介な害虫が同時に現れてレモン栽培を脅かしているため、奴らを駆除すべく立ち上がりました。
その記録を記事として残していきます。
レモン日記|ハモグリガとカイガラムシ
レモンやミカンなどの柑橘類を栽培されている農家さんにとって、ハモグリガやカイガラムシは見る機会の多い害虫と言えます。
この2種類の害虫に共通する特徴は繁殖力が強いと言うことです。食害に気付いた時はたいてい大量に発生しています。アブラムシやハダニなどもそうですが、1匹1匹の力はたいしたことなくても群れで集中攻撃されると甚大な被害となります。
今回被害を受けていたレモンは栽培年数が浅く、他の柑橘栽培品目「不知火」や「ポンカン」に比べると木が細く、葉っぱも少ない状態です。被害が拡大する前に早急に対処する必要がありました。
ハモグリガ・カイガラムシに関して知識のある方が多いとは思いますが、レモン栽培初心者や害虫をあまり知らない人がおられることを想定して、それぞれ説明していきます。
ハモグリガの話
ハモグリガは植物の葉っぱの中に入り込み食害する厄介な害虫です。植物の葉っぱの中には葉緑素があり、植物が光合成を行って養分を作り出す大事な部分です。しかし、ハモグリガによって葉っぱの中を食害されると光合成がうまく行えずに栄養が作り出せません。
1枚2枚程度なら被害が出ても生育に影響はありませんが何十枚も食害されるとそうはいきません。樹勢の低下や最悪の場合は枯れてしまうことも考えられます。
先ほどの写真ではボロボロになった葉っぱを写していましたが、あの状態はハモグリガの幼虫が葉っぱを食べ終わって脱出した後です。ハモグリガの幼虫は葉っぱの中で生活していますが、成虫になる時は葉っぱから脱出してさなぎになります。そして成虫になり子孫を残すため再度葉っぱに卵を産み付けます。
どこかで対処をしないとハモグリガは繁殖を続けて大切に栽培している植物を食害され甚大な被害を受けることでしょう。
ちなみに葉っぱの中にいるハモグリガの幼虫がこちらになります。
これは3枚の葉っぱを持っている写真です。それぞれの葉っぱに1匹ずつハモグリガの幼虫が入っており、食事の真っ最中です。今回は食害を受けている葉っぱをむしって幼虫を潰しましたが、葉っぱの量が少ない場合は幼虫だけ駆除して葉っぱを残すやり方もあります。
被害に気付いたら早急に行動していきましょう。
管理しているレモンの一部では葉っぱがボロボロになったものがチラホラあり、近くの葉っぱをよく見ると幼虫のいるものが見つかりました。つまり発生は最近で繁殖し始めていると言えます。
被害をここで食い止められるかどうかで今後の生育に大きな差が生まれそうです。
カイガラムシの話
ハモグリガは名前の通り葉に潜る。カイガラムシも名前の通り貝がらをまとったような虫です。
カイガラムシと一括りに言っていますが、実はものすごく種類が多いです。種類ごとに特徴が違ったりしますが、ここでは長くなるので説明は省きます。
多少生体に差がありますが、カイガラムシは一般的に成虫になると動かなく(動けなく)なります。説明すると、幼体の時は活発に動き回り生涯留まる場所を探します。良い場所を見つけたら貝がらのような鎧をまとって動かなくなります。
ハモグリガは葉っぱの中を動き回って食害しますが、カイガラムシは動かずに植物の汁を吸います。汁を吸われた植物は栄養分を吸い取られている状態が続き、数匹程度なら取られる栄養分も少量ですが群れで吸われると樹勢の低下や最悪の場合は枯れてしまいます。
写真の状態はまだ可愛らしいもので、過去に不知火がやられた時は大きなカイガラムシの塊がいたるところにありました。
こちらもハモグリガ同様に発生初期くらいに感じます。発見が遅れると部分的に枯れが出たり木全体が黒っぽくなります。今回の発生状況の規模としてはレモン全体の1割程度にカイガラムシが確認できるくらいでした。
こちらもこれ以上繁殖させないように対処していきます。
すす病の話
カイガラムシやアブラムシが大量発生すると高確率で「すす病」を引き起こします。
すす病もその名の通りすすがついたような状態になる病気です。道端に植えられてあまり管理されていない果樹などによく見られますが、全体が真っ黒になっていることもあります。
被害は軽いですが、レモンに発生したすす病がこちらです。
黒い粉をかけたような状態で見た目も悪いです。
このすす病は葉っぱだけでなく、幹や果実にも発生するため商品の品質低下が避けられません。水で洗えばたいていは落ちますが、労力もかかるため根本的な対処をしなくてはなりません。
根本的な対処とは発生原因、すなわちカイガラムシの駆除となります。ではカイガラムシとすす病はどのような関係性なのか解説していきます。
カイガラムシと蟻とすす病の話
すす病を引き起こすものは菌で空中に漂っているどこにでもいる菌です。その菌は一定の条件が満たされると葉っぱや幹などに定着してすす病を引き起こします。
最初に蟻が登っていたと話をしましたが、蟻はメリットがあるから木に登っています。
写真では分かりにくいですが蟻の近くにはカイガラムシがいます。カイガラムシがいるから蟻が登ってくると言った方が正しいですね。
蟻はカイガラムシのあるものを求めて木を登ります。それはカイガラムシの排せつ物です。
カイガラムシも生き物ですので植物の汁を吸うだけではありません。植物から栄養を奪い(食事)余分なものを出します(排せつ物)
カイガラムシが発生したら観察してみてほしいのですが、透明な水滴のようなものが出ています。これが排せつ物であり、蟻が求めているものです。この水滴は甘い粘着質の成分で蟻が好むものです。
蟻はカイガラムシやアブラムシを守るかわりに甘い水滴を貰うのだと考えられています。これはお互いにwinwinの関係で自然界ではよくあるようです。
カイガラムシの排せつ物を蟻が全て貰っていればすす病は発生しないのですが、この粘着質の水滴が厄介でここにすす病の菌が付着して繁殖してしまいます。
先ほども書きましたがカイガラムシは動けません。カイガラムシの食事は植物の汁を吸うことで、排せつ物は粘着質の水滴です。この水滴は垂れ流し状態で下に下に落ちていきます。
ここまで書けば想像することは容易ですが、下に葉っぱがあれば葉っぱの上に粘着質の水滴が広がっていきます。この水滴に空気中の菌が付着してすす病を引き起こします。果樹の枝に落ちれば枝にすす病が、果実に落ちれば果実にすす病が発生していきます。
すす病は水分を含ませた布などで拭けばそれなりに取れますが、いくらすすを取っても根本の原因となるカイガラムシを放置していれば次から次へとすす病は発生します。
葉っぱの表面をすす病でコーティングされてしまえば光合成ができなくなり樹勢の低下を引き起こします。つまりカイガラムシが発生すると一時被害として植物の汁を吸われて樹勢低下、二次被害としてすす病が発生して光合成不足から樹勢低下と言うダブルパンチの被害を受けます。
カイガラムシもハモグリガも厄介な害虫です。
レモン日記|病害虫の対処
今回、厄介な「ハモグリガ」「カイガラムシ」「すす病」を紹介していますが、すす病はカイガラムシとセットで考えます。カイガラムシを駆除すればすす病の被害も止まると言う認識で害虫駆除をしていきます。
と、言うことでここからはハモグリガとカイガラムシの対処について説明していきます。
うちでは農薬と言われる強い薬はできる限り使わないようにしています。過去にカイガラムシが発生した時も歯ブラシ片手に駆除を頑張りました。しかし、数が非常に多いことと見逃せばすぐに大繁殖した嫌な記憶があるため、今回は農薬を使いました。
(カイガラムシに対して農薬を使いたくない場合は歯ブラシがおすすめです。カイガラムシは基本的に動けませんので歯ブラシで落として放置しておけば自然に駆除できます。)
そしてハモグリガに関して今回は農薬を使いません。やってみたい自然成分での防除があるのでそちらを試します。過去に使ったことがあるものですがハモグリガの発生タイミングで使ったことがないため効果を確認しようと思います。
ハモグリガの対処方法
ハモグリガの生態についてかるく説明しておきます。
ハモグリガの成虫はとても小さな虫で、あまり見かけることはないと思います。成虫は葉っぱに卵をうみつけ、ハモグリガの幼虫は葉っぱの中を食害して成長していきます。食害を続けた幼虫は成虫になるため葉っぱに穴を空けて脱出します。地面に脱出した幼虫はさなぎになり、やがて成虫になってたまごをうむ…そして次世代に繋がります。
気になる対処・駆除方法で最初に思いつくのは農薬散布による駆除ですね。
簡単で比較的手軽にできる方法ですが薬品を使うことに抵抗がある人もいます。うちでもできる限り農薬には頼りたくありません。
今回使ったものは「ダイコーニームオイル」です。大興貿易株式会社から販売されているニームオイルで、農薬ではない天然防除資材です。
ニームオイルはインドセンダンという植物の種子から抽出したオイルでアザディラクチンと言う成分に害虫忌避効果が期待されています。期待されているとの表現ですがニームオイルは農薬ではありませんので害虫が駆除できます・いなくなりますとは言えないからです。
このニームオイルはネットの記事やYouTubeの動画を見ていて効果がありそうと感じたため過去から散布を行っています。
もふもふ農園でニームオイルを使っているのになぜハモグリガが出たのか…答えは簡単です。購入したニームオイルを春に使い切ってしまったからです(笑)
今回は新しくニームオイルを買いなおしてハモグリガ対策をすることにしました。
ちなみにニームオイルは250mlの方がおすすめです。250mlタイプは計量カップが付属されているため希釈がしやすいです。
ニームオイルを浴びた特定の害虫は食欲低下や脱皮阻害の症状が出るようです。ニームオイルの商品ページでは「害虫の孵化・摂食の抑制」に期待ができ、なおかつハチやミミズなどの益虫には影響がないと書かれています。
唯一の面倒な点が1週間に1回2回の散布が望ましいと言うことで、これは正直やってません(笑)
ただ、今回はハモグリガをなんとかしたいので散布を1週間に1回ペースで行い、様子を見ていくことにしました。
希釈倍率としては180倍から500倍で1ℓの水に対して2ml入れると500倍希釈ですね。
希釈倍率を毎回変えて散布することが推奨されているようですので、毎週倍率を変えて散布していきます。
散布は上から下までまんべんなく液をかけるようにしましょう。
散布機に関してですが、うちでは大型の散布機と小型の散布機を使い分けています。今回は散布範囲が少量ですので2L程度の小型散布機を使いました。家庭菜園や少量栽培なら2L散布機で十分です。
ハモグリガの幼虫は葉っぱに潜っているため薬液(ニーム)がかからないのでは?と思われがちですがハモグリガの食べたあとは葉っぱもスカスカになっているため薬液がしみこむそうです。
ハモグリガの被害が止まるか、繁殖を続けるかは今後の記事で追記したいと思います。
2022.11.19追記
10日程度が経過した11.19に再度様子を見に行きました。
前回ニームオイルを散布した位置のまま動かなくなっていました。正直効果があるかは半信半疑でしたが、食欲低下効果を実感しました。
他のハモグリガも同様にニームオイルを散布した位置から動かなくなっており、今後も愛用しようと決めました。
※ニームオイルは農薬ではありませんので同様の効果が得られるとは限りません。今回は2Lに対して12mlのニームオイルを使って希釈しました。
カイガラムシの対処方法
個人的にはハモグリガより厄介だと思っています。カイガラムシは光の当たらない暗い場所を好む傾向があり、枝の付け根や葉っぱの裏など見えにくい場所で繁殖しています。加えて自慢の殻で薬剤も効きにくい・見逃せば繁殖を続けて被害が拡大していく厄介な害虫です。
唯一の救いはほとんどの種類が動けないため歯ブラシなどで落とすだけで駆除できます。過去には歯ブラシ片手にカイガラムシ退治をしていましたが見逃しが多かったり、カイガラムシの確認された果樹の本数が多かったため全てに手が回りませんでした。
次々に被害が拡大する厄介な害虫ですので今回は薬品による防除を行いました。必要があれば農薬による防除も行う。これが今の考えです。
過去は無農薬にこだわって樹勢が低下しても枯れ始めても農薬を使った防除は行いませんでしたが、大切なのはそこではありませんでした。これは私の考えなので人それぞれですが適度な管理を行い果樹にも人にも負担の少ない栽培をしていきたいと思います。
余談ですが、将来的には害虫のハンター(捕食者)を増やして農薬を使わない栽培ができないか挑戦してみたいです。今回で例えるならハモグリガやカイガラムシを捕食する生き物を圃場で増やして食べてもらう。生き物任せで難易度の高い栽培方法ですが実現すれば無農薬栽培も見えてきます。今後どこかで挑戦していきたいと思います。
※過去にアブラムシ対策でテントウムシを投入したことがあり、効果を実感しました。たまたま実現した内容ですが良い結果となりました。
ここからが本題ですが、今回はスプラサイドと言う薬を使いました。薬はどんなものでも良いと言う訳ではなく、「使う植物」と「対応する害虫」と「薄める倍率」が決められています。
見にくくてすいません(笑)今回使ったスプラサイドですが、裏面に適用害虫と使用方法が書かれています。ここを守って散布を行う必要があり、記載されていない作物に使ったり、希釈倍率を無視してはいけません。
今回であればかんきつのカイガラムシ類に使用したいので作物名・適応害虫名ともにクリアしています。ちなみに今回発生しているハモグリガ対策として使用するのはNGで、かんきつにはハモグリガの登録がありません。それならばかんきつのハモグリガ・カイガラムシの登録を取っている薬品を選定して使用する必要があります。
例えばアルバリンには両方の登録がありました。
カイガラムシとハモグリガには絶対アルバリン!と言う訳ではありません。たまたま保管していた薬品で適応害虫が記載されていたので紹介しました。農薬の中にはとても強いものがありますのでしっかり調べてから使うようにしてください。
ちなみに今回紹介した粉タイプは自分で粉と水を混ぜて希釈する必要がありますが、市販されているものには最初から完成したスプレータイプのものもあります。最初から全て完成しているので手間がありませんが金額は正直高いです。
使う対象が少ないならスプレータイプを使って薬品を保管しなくて良くする、使う対象が多いなら粉タイプで都度薬液を作ってコストを抑えるような使い方・考え方をするのが良さそうです。
過去にアゲハ蝶の幼虫が大増殖して手に負えなくなった時はスプレータイプの薬剤を使用しました。使い切ったあとはこまめに監視して常に対処しています。
まとめると、今回はスプラサイドを1500倍に希釈して葉の裏や枝の根本などを重点的に散布しました。ちなみに薬品は使用回数が決まっているので既定の回数以上散布しないでください。散布した日付をメモっておくこともおすすめします。
直売所などへの農産物の出荷では薬剤散布の日付や回数を報告する書類を提出する必要があります。(うちが出しているところは全てですが恐らく他のところも提出する必要があると思います)
先ほどの話で適応していない薬品を使用すると出荷できませんので薬品の使用はルールを守るようにしてください。
まとめ
ハモグリガとカイガラムシはいろいろな野菜・果樹に現れる厄介な害虫です。特にカイガラムシはすす病を引き起こす原因にもなるため早期の対処が必要です。
対処には薬剤散布による駆除や害虫忌避剤による減少、手作業で捕殺などいろいろな方法がありますので自身の考えに近いものを選んでください。
個人的なおすすめは天然の防除資材であるニームオイルの散布ですが、理想の散布が週1回程度と考えると正直手間と考えられそうです。栽培面積が広いと散布だけで多大な労力と費用がかかります。
それぞれの特徴まである程度考慮して決めることをおすすめします。
2021年の12月から始めたレモン栽培ですが、もうじき1年となる現在はモサモサになっています。厳寒期がきたら1本主枝の主幹形・2本主枝の双幹形・開心形をそれぞれ作れる骨格に剪定していきます。
剪定を行ったら、それぞれの樹形のメリットや剪定手順を記事にまとめていきたいと思います。
一部のレモンは高さが鉢込みで3mに達しました。それぞれの木の形を見ながら樹形を作り上げていきます。
レモン栽培を始めてから未だ枯れたものは1本もありません。栽培は順調と言え、翌年以降の成長も期待できます。来年は多少は果実の収穫をしようと思います。
レモンが収穫できたら様々なレモン料理を作っていきたいと思います。
今回も最後まで読んでいただき感謝です。
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