こんにちは!管理人のすのうです。
今回のテーマは「アスパラ栽培の1年」です。アスパラ栽培をしようと思ってるけどどんな作業が必要なの?そんな疑問が解決できるような記事にしたいと思います。
ちなみにアスパラ栽培の中でもビニールハウスでの「長期どり栽培」をベースに伝えていきます。長期どり栽培とは簡単に言うと春~秋までアスパラを収穫する栽培方法で、収穫期間は120日~220日ほどと長期間に及びます。
なぜこの栽培方法を伝えるかと言うと、長期どり栽培はもふもふ農園の栽培スタイルだからです。栽培方法はいくつか種類がありますので後ほど紹介します。
アスパラ栽培はどんなことをするのか学んでいきましょう。この記事を読めばきっとアスパラを栽培したくなる!…はずです(笑)

アスパラ栽培の1年。教えてもらおうか!
アスパラガス栽培
ここでは簡単な「アスパラ栽培の流れ」とアスパラ長期どりを含めた栽培スタイル「作型」について説明していきます。
まずはある程度の全体像をつかんでいきましょう。
アスパラ栽培のサイクル
最初に簡単な栽培サイクルを伝えていきます。アスパラ栽培「長期どり」の特徴は立茎ハウスでのアスパラ収穫、いわゆる「夏アスパラ(夏芽)」があることです。栽培スタイルによっては春アスパラ(春芽)の収穫終了後は立茎して収穫しないものもあります。

立茎説明が必要だぞ。
「立茎」と言うワードが出てきました。読み方は「りっけい」です。
立茎とはその名の通り茎を立てることです。アスパラは春芽の収穫が終わると根に養分を蓄えさせる必要があります。理由は分かりますね?春芽を出すのに養分を使ってしまったので回復する必要があるからです。ここで再度、養分を蓄えながら夏芽を出させていきます。
これが立茎したアスパラです。もはや消費者目線からするとアスパラの原型がありませんね。皆さんが普段食べているアスパラガスを収穫せずに成長させるとこのような木になっていきます。光合成により養分を作り、アスパラの根(貯蔵根)に養分を蓄えていきます。
養分が回復してくると夏芽が出始めて再度収穫していきます。
では話を「栽培サイクル」に戻します。
最初の1年目は定植(植え付け)がありますのでそこから説明していきます。
まずはアスパラガスの苗を3月に定植します。この苗は細く弱々しい苗ですのでもちろん春芽・夏芽の収穫は行いません。まともに収穫できるのは3年目からとなります。
これはもふもふ農園で2021年3月に定植をしたアスパラ「PA050」です。PA050とはアスパラの品種のことです。イチゴで例えると「あまおう」や「紅ほっぺ」などの分け方と同じです。アスパラにも実は多くの品種があります。
このPA050の栽培記録も記事にしており、毎月成長の記録を更新していますので興味があれば見ていってください。
また、アスパラにはどんな品種があるの?と疑問が出たら簡単な品種紹介の記事も投稿しています。こちらも興味があれば見ていってください。
このアスパラの苗を定植し、1年間の株養成を行います。この1年間はアスパラ収穫をせず、アスパラの根(貯蔵根)に養分を蓄えさせ大きくしていきます。
3月に定植を行い秋まで株養成を行います。冬頃には緑色だったアスパラが黄化するので鎌や草刈り機などで地上部の茎を刈り取ります。刈り取った茎はビニールハウスから持ち出して焼却処分します。刈り取り後はビニールハウスのサイドを閉じて保温し、冬の終わりごろの春芽の収穫を行います。
冬場は一見何もないビニールハウスに見えますが土の下ではアスパラの根が春を待ちわびています。1年間ためた養分で2年目の春芽を出していきます。2年目は少しは収穫ができますが、まだまだ根が小さく蓄えている養分量も少ないため途中で収穫をやめて立茎をします。
立茎ができて養分が蓄えられれば多少の夏芽が収穫できます。収穫が終われば再び株養成期間とし、冬頃に立茎したアスパラが黄化したら同様の手順で刈り取ります。
まとめると①春どり②立茎③夏どり④株養成⑤刈り取りを毎年繰り返していきます。
この手順の中に細かい点「芯止め」や「防除」「追肥」や「整枝」などの作業が含まれます。ここも後々説明していきます。
では次に作型の話をしていきます。
アスパラ栽培の作型
アスパラ栽培は主に「露地」か「ビニールハウス」での栽培と少し特殊な「伏せ込み促成」に分かれ、その中に普通どり・2季どり・長期どり・特殊な伏せ込み促成があります。それぞれの作型を説明していきます。

露地と伏せ込み促成の説明が必要だぞ。
露地(ろじ)栽培とはハウスなどの施設を使わずに畑などで栽培することです。メリットとしては「広い面積で栽培できる」ことや「コストが安い」などが挙げられます。もふもふ農園では全てビニールハウスで栽培していますが、逆に全て露地栽培のアスパラ農家さんも多いです。露地もビニールハウスのどちらにもメリットはあります。
「伏せ込み促成栽培」はこの後に説明をします。
作型:普通栽培
普通栽培は「春芽」の収穫のみ行う方法です。収穫期間は最大でも60日前後で集中して収量をあげて収穫後は立茎を行い株養成をします。
普通栽培のメリットとしては労力が少ないことや夏以降は他の野菜を栽培する複合経営がしやすいことが考えられます。
夏芽のアスパラは立茎した親茎の中を進んで収穫を行うため、かなりの労力を必要とします。春芽のみの収穫は気持ち的にも楽になります。
この普通栽培は主に露地栽培で取り入れられています。ビニールハウス栽培では「半促成栽培」と言われています。促成とは露地栽培よりも早く収穫することです。
そんな「普通栽培」のデメリットは「茎枯病」リスクが高まることです。茎枯病はアスパラの病気です。説明すると長くなるので省きますが、知っておきたい場合は過去の記事で説明しています。
普通栽培は春芽の収穫以降は立茎して放置されるため管理不足から親茎や葉が密集してしまいます。過湿状態となり茎枯病のまん延・翌年の収量低下につながってしまいます。
作型:2季どり栽培
続いて2季どり栽培の説明です。2季どりは春芽を収穫後、株養成のため収穫を中断します。その後、夏・秋どりに移行する作型です。
メリットとしては普通栽培同様に収穫しない期間があるため別のことができます。加えて普通栽培で株養成期間は放置していた立茎状態のアスパラですが、2季どり栽培では夏芽の収穫もあるため管理ができます。
作型:長期どり栽培
もふもふ農園で行っている「長期どり栽培」の説明です。長期どりは2季どりの収穫中断がないスタイルです。特徴としては「立茎しながら収穫」を継続していきます。
メリットとしては管理をしながら収穫を行うため収量すなわち収入を確保できます。
この立茎しながら収穫する「立茎管理」に関して、記事を投稿しています。興味があれば記事を見ていってください。
デメリットとしては毎日の収穫があるため、他の作業に入りにくいことが挙げられます。
作型:伏せ込み促成栽培
最後に少し特殊な「伏せ込み促成栽培」です。この作型の特徴は「冬に収穫」するスタイルです。もちろん普通に栽培したら冬には収穫できません。手間のかかる栽培方法です。
11月~12月にアスパラ株を掘り起こして加温したビニールハウスに伏せ込み、冬季に収穫する作型です。簡単に言うとアスパラをごまかして春が来たと思わせるイメージですね。
メリットはもちろん冬場の収入です。他にもライバルが少ないことや比較的作業量の少ない冬場に仕事がある、などです。
ここまでが簡単な栽培サイクルの確認と作型の説明になります。ここからは少し踏み込んだ「アスパラ栽培」について話をしていきます。
言うならば最初の「栽培サイクル」の補足・肉付けのようなものです。
アスパラ栽培【詳細】
ここからはより詳しい栽培方法です。最初に言っておきますが、栽培する地域や気候によって作業内容のタイミングは変わってきます。これから説明する内容は「もふもふ農園」のアスパラ栽培の1年間ですのでご了承ください。
例えば「立茎」作業では同じ地域・同じ品種でも立茎タイミングは異なります。アスパラ栽培は決まったタイミングの作業ではなく様子をみながら進めていく形となります。
これから説明するアスパラ栽培の1年間は目安であり、必ずしもその月に行う作業ではありません。
アスパラ栽培の1年【時系列】
最初に時系列で1年間を見ていきましょう。
- 1月肥料入れ牛糞や有機肥料を撒く
- 2月肥料入れ牛糞や有機肥料を撒く
- 3月春芽収穫3月下旬頃から春芽の収穫
- 4月春芽収穫春芽の収穫
- 5月立茎親茎の選別をしながら収穫を続ける
- 倒伏防止ネットでの倒伏防止対策
- 芯止め(摘芯)一定の高さで芯止めを行う
- 防除病害虫の防除を行う
- 6月夏芽収穫夏芽の収穫
- 整枝側枝の除去
- 防除病害虫の防除を行う
- 7月夏芽収穫夏芽の収穫
- 整枝側枝の除去
- 防除病害虫の防除を行う
- 8月夏芽収穫夏芽の収穫
- 防除病害虫の防除を行う
- 9月夏芽収穫夏芽の収穫
- 防除病害虫の防除を行う
- 10月夏どり収量収穫の終了
- 防除病害虫の防除
- 11月防除病害虫の防除
- 12月刈り取り茎や葉が黄化したら全て刈り取る
- ネットの撤去倒伏防止ネットの片付け
- バーナー焼却地上部をバーナーで焼く
各月のおおよその作業をまとめました。重要になってくるのは「防除」です。アスパラは病気や病害虫に細心の注意を払って防除を行う必要があります。収穫をしながら病気や病害虫の有無を確認し、必要に応じて防除します。
アスパラの病害
アスパラガスは多年生の野菜です。病害によって発生年だけでなく、翌年以降の生産性にも大きな影響を与えます。代表的なアスパラの病害は「茎枯病」「斑点病」「褐斑病」があります。
病害:茎枯病
病原菌の胞子が雨やかん水時の跳ね返りによって若茎頭部に侵入し、感染します。
若茎の成長と並行して菌が増殖し、灰色~茶褐色の病斑が形成されます。
茎枯病の厄介なところは病斑から胞子が出て、別の若茎や葉に感染が拡大するところです。感染に気が付かないまま放置するとハウス全体に茎枯病がまん延して生産性が大きく低下してしまいます。
もふもふ農園のアスパラも茎枯病が発生し、対処に追われています。
病害:斑点病
この病害の病原菌は被害植物に着生して越冬し、翌年の伝染源となります。
降雨と過繁茂により茎葉中が高湿度になることで発生が助長されます。本病の発生する適温は20℃前後で梅雨時期や秋雨時期に発生が多く、茎葉が黄化して落ちていきます。
ポイントは過繁茂にならない管理と予防的な薬剤散布です。
病害:褐斑病
この病害の特徴は外側が赤褐色で中央が灰色、灰色の中は小さな黒色の粒を密生させます。
本病は進行が早く、早期発見と該当部分の撤去が重要です。比較的高温期においても拡大が進むため、発生初期からの防除が重要です。
予防対策としては高温多湿となる過繁茂を避けることが考えられます。
アスパラの病害虫
アスパラ栽培で特に注意が必要な病害虫として「ヤガ類」と「アザミウマ類」の2種類がいます。特徴としてはヤガ類はヨトウムシと言う芋虫系でアザミウマ類はネギアザミウマと言うシラミのような小さい虫です。
ちなみに私はヨトウムシが寒気がするほど嫌いです。秋の季節はヨトウムシが発生しやすく毎回憂鬱な気持ちで収穫しています…基本的には防除をして発生を防いでいますが、アスパラ収穫時に見つけたら背中が痒くなります。

駆逐せねば。
ヨトウムシなどのヤガ類はアスパラの若茎を食害してしまい出荷できなくなります。
アザミウマ類はアスパラの頭部に隠れ、汁を吸います。汁を吸われたアスパラは固くなり、最後はスカスカになってしまいます。品質が大幅に低下する厄介な病害虫です。
アザミウマ類による若茎の被害写真です。鱗片が褐変化して水気がなくなっています。
防除を怠ると病害虫は増殖を続け、取り返しのつかないことになります。アスパラの病気や病害虫に防除は欠かせません。
このアザミウマ類の被害はもふもふ農園でも発生しており防除を行っています。防除の手順などは詳しく書いていませんが記事にしています。
この整枝記事内にてスリップス(アザミウマ類)と防除に関して説明しています。
以上がアスパラ栽培の1年間の流れと病害虫の説明になります。アスパラ長期どりではかなりの期間収穫作業があるため、他の野菜や果物との複合経営がやりにくいです。
ちなみにもふもふ農園ではつーさんがアスパラ栽培をしながら「米」「玉ねぎ」「麦」「黒豆」「梨」「ポンカン」「デコポン」「キンカン」などを同時進行で進めています。

1人で。
大変さを知れば知るほど心配になるので、私もできる限り応援に入ります。
何が言いたいのかと言うと、50aの面積でアスパラ栽培をしながら他の野菜栽培も同時にやれないことはない!とのことです。自分の時間はかなり削られますが無理ではないです。

鉄人かよ(笑)
では今回の記事をまとめていきます。
まとめ
アスパラ長期どりは収量(収入)を確保した長期間の収穫スタイルです。立茎タイミングや病害虫被害に注意していれば安定的な収入が見込めます。
やることはそれなりにありますが、見合ったリターンがあるため頑張れます。立茎や芯止めや整枝など聞きなれない単語が多くありますが内容はそれほど難しくないので覚えていきましょう。

お前もまだまだだけどな。

しょぼーん…


立茎記事はこちらです。
芯止め(摘芯)記事はこちらです。
整枝記事はこちらです。
今回の記事が参考になったり、アスパラ栽培に興味を持った人が増えたら嬉しいです。
ちなみにアスパラを副業としてやりたい人に向けた私の見解も記事にしています。兼業農家や週末農家に興味がある人はこちらも見ていってください。
アスパラ農家は日々勉強!これからも頑張っていきます。
今回も最後まで読んでいただき感謝です。
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