こんにちは!管理人のすのうです。
今回のテーマは「ボカシ作り」です。農業に携わっている方はピンとくると思いますが、ボカシと言う言葉に馴染みが無い人も多いのかも知れません。
今回はボカシって何?と言う疑問からどんな魅力があるか、どうやって作るのか等を記事にまとめていきます。この記事を読むと、きっとボカシを作りたくなると思います(笑)
先に結論を書いておくと、入れ物に「米ぬか」と「納豆」と「水」を入れて納豆ボカシを作りました。納豆菌はとても強い菌ですのでボカシ作りに最適です。私はこの納豆ボカシ作りで失敗したことがありません。失敗知らずの納豆ボカシ作りを解説していきます。
小さく始める納豆ボカシ
タイトルにもある通り、今回は小さく始めるボカシ作りです。大量にボカシ作りをしても良いですが、ボカシ作り初心者は小さく始めることをオススメします。
理由として、「集める材料が少なくて済む」「広い場所を必要としない」「失敗しても傷が浅い」ことが挙げられます。
小さく始めることで自分に合っているか、ボカシは今後も作れそうかを判断できますので小規模でやってみてその後は自分に合った規模に調整していけば良いと思います。今回の記事では米ぬか5㎏を用意して納豆ボカシを作っています。米ぬか5㎏くらいならすぐに用意できそうですね。
では最初に「ボカシ」について学びましょう。
ボカシって何?
ボカシ(ぼかし肥料)とは「米ぬか」や「鶏糞」などの「有機物」を主な原料とし、それらを微生物により分解、発酵させてつくる肥料を指します。
一言で言うとボカシは発酵肥料です。ここで疑問が出る方もおられるかもしれません。米ぬかや鶏糞はそのまま畑や田んぼに撒いたりすることがあり、なぜ発酵させる必要があるのか?
答えとして米ぬかや鶏糞などは微生物によって分解されやすいため、初期の急速な分解による有機酸の生成や発生したアンモニアガスなどが、植物の生育を阻害することがあるためです。
もっと分かりやすく言うと「急速に分解されないようにあらかじめ微生物による分解や発酵をさせ効き目をぼかす」と言うことです。
「米ぬか」を例にすると成分は、ほとんどが易分解性で、微生物によって急速に分解が進みます。 やわらかい有機物と例えられ、少し難しい記号を使うなら「C/N比(シーエヌヒ)」で表すことができます。
米ぬかのC/N比は10~25あたりと言われており、この値は窒素所有量が多いゾーンです。(書籍やネットに記載されている情報にバラつきがあったためこのように書いています)
C/N比って何?
C/N比とは有機物などに含まれている炭素量と窒素量の比率。「炭素率」と言います。 たとえば、ある有機物に炭素100g、窒素10gが含まれている場合、この有機物のC/N比は10となります。
少し難しい話ですが、炭素(C)含有量を窒素(N)含有量で割って計算します。ですので先ほどの値で計算すると「炭素100g÷窒素10g=10」でC/N比は10ですね。
C/N比は値が低いほど窒素含有量が多く、値が高くなると窒素含有量が少なくなります。C/N比の基準値は20~30で、それを境に高いか低いかを判断します。
詳細は割愛しますがこう捉えることができます。
「C/N比が低い有機物は、肥料効果は高く土壌改良効果は低い」
「C/N比が高い有機物は、肥料効果は低く土壌改良効果は高い」
米ぬかはC/N比が低いので微生物が一気に増えやすいですが、効果は長続きしません。C/N比が高い有機物にはモミガラがあり、こちらは分解されにくく微生物も殖えにくいです。ただ、長期的に見ると土壌改良効果があると言えます。ちなみにモミガラのC/N比は80と高いです。
今回はボカシ作りの記事ですのでC/N比の話はこれくらいにしておきます。要は米ぬかは分解されやすいのでボカシの材料に向いていると思ってもらえたら良いです。
ボカシ作りの菌
タイトルにもあるように今回は「納豆菌」の力を借りてボカシ作りを行います。
納豆菌は改めて説明するまでもありませんが、納豆作りに必要不可欠なアレです。
より詳しく言うと納豆菌は「枯草菌」と呼ばれるものの一種です。稲の藁に多く生息し、日本産の稲の藁1本に、ほぼ1000万個の納豆菌が芽胞の状態で付着していると言われています。納豆と聞くと藁の中に納豆が入っているものを想像する方もいるのではないでしょうか。納豆菌は藁と相性が良いからですね。
藁の中に納豆菌がいることが分かりましたが、今回の納豆ボカシでは藁にいる枯草菌は使いません。
もっと簡単に「市販の納豆」を使います。
市販の納豆パックにはもちろん納豆菌が住んでいます。手軽に納豆菌を確保するためには納豆を買う!これだけです。
納豆菌ってどんな菌?
納豆菌を使って納豆ボカシを作りますので、少し納豆菌について説明しておきます。
納豆菌はとても強い菌で「繁殖力」がケタ違いです。なんでも適温状況下では30分で倍に増えるほど繁殖が早くその際にたくさんのエネルギー(エサ)を使います。植物に病気を引き起こす病原菌がいた場合、病原菌のエサを奪って繁殖するため病気を抑える効果にも注目されています。有名なところで言うとキュウリなどののウドンコ病やアスパラなどの灰色カビ病に効果があると言われていますね。
※納豆水を散布する話で今回の納豆ボカシとはまた違います。
そんな納豆菌は100℃の熱湯でも死滅せず、-35℃の超低温状態でも生存できる菌です。この1文を読めば納豆菌がいかに強いか分かるのではないでしょうか。ちなみに納豆菌の適温は45℃~70℃で酸素を好む好気性の菌と言う特徴もあります。適温が高いので今回の納豆ボカシ作りではお湯を入れたペットボトルを入れて初期発酵を手助けしています。
病原菌のエサを奪って繁殖し、病気を抑える(静菌作用)効果のある納豆菌、良いことばかりと思いそうですが実は酒関係の職種では嫌われているそうです。と言うのも納豆菌の持つ分解酵素がお酒造りに必要な麴菌を追いやってしまうそうです。納豆の繁殖力や生存能力が高すぎるが故にデメリットも存在しているようですね。
今回の納豆ボカシは「納豆菌」と「米ぬか」で作りましたが、過去には踏み込み温床による腐葉土を「土着菌」と「落葉」使って作りました。普通の踏み込み温床ではなく、NPポットを使った簡易的な温床作りです。結果はなんとも微妙な結果(笑)でしたが一応発酵熱も出ました。踏み込み温床作りに興味があればこちらの記事も読んでみて下さい。
余談:納豆パックの話
余談ですが、皆さんは納豆をどうやってパックに入れているか知っていますか?納豆自体がネバネバするのにあれほど綺麗に規定の分量がパックに入っている。これって不思議ではないですか?
これの答えは「パックに入れた段階では納豆ではない」からです。
どういうこと?こういうことです。
パックに茹でた大豆と納豆菌の液体を入れてフィルムや醤油やからしを入れて蓋をしています。パック内で発酵させて納豆ができていると言うことです。納豆パックの蓋をよく見ると小さな穴が開いていると思います。納豆菌は酸素が好きなので空気を入れて発酵を促しています。
納豆ボカシの作り方
ここからは私が普段から作っている納豆ボカシの作り方を紹介していきます。
どれも簡単に手に入るものですので同じように作ればしっかりと納豆ボカシを作ることができますので是非チャレンジしてみてください。
必要なもので最初は入れ物ですが「ポリ容器」又は「トロ箱(発砲スチロール)」を準備しましょう。ホームセンターに行けばだいたい置いています。値段も安いのですぐに購入できるのが良いですね。私が普段使っているのは発泡スチロールのトロ箱でサイズは120サイズですが、あまりにも汚かったので今回は記事用に新しいものを買いました(笑)
写真撮影用に新品のトロ箱を手に入れましたが100サイズしかなかったので今回の記事内では100サイズで作っていきます。
※ポリ容器やトロ箱をまとめて、ここからは「容器」と書いていきます。
※使う米ぬかの量は5㎏と書いていますが100サイズの容器だと満タン入れて5㎏くらいです。満タン入れると混ぜにくいことや初期発酵用のペットボトルを入れにくいので120サイズの容器を購入することをオススメします。
※もちろん5㎏の米ぬかにこだわる必要もありません。水の分量だけ調整するようにしてください。記事内の写真では100サイズの容器に8割ほどの米ぬかを入れました。重さとしては約4㎏でした。
容器が用意できたら「米ぬか」を準備しましょう。米ぬかは精米所で無料で持ち帰れる場所があったり、米を取り扱っているところで分けてもらったりできます。米ぬかの確保が難しいようでしたら購入することも1つです。一般的な相場として100円/㎏あたりで販売されているようです。注意点としてはネットで探そうとしない方が良いです。単価が安い米ぬかですが500円/㎏で販売されていたり送料が米ぬかの価格を上回っていたりします。
小さく・コストをかけずにボカシ作りをするのにボカシを買うより高くなったら元も子もなくなります(笑)
地元のライスセンターや精米所などを覗いてみましょう。
容器に米ぬかを入れて土台を作ったら「納豆」と「水」を用意します。納豆は市販の納豆を1パック分準備します。ちなみに納豆は米ぬかに合わせて分量を調整する必要はありません。5㎏でも10㎏でも15㎏でも1パックで大丈夫です。米ぬかがあまりにも多ければ2パック・3パックと増やしても大丈夫です。
使う納豆選びですが私はなるべく新鮮そうなもの・安すぎないものを選ぶように心がけています。値引きシールが貼ってあったり賞味期限が近いものは避けています。これらの納豆でもボカシ作りはできると思いますのでご自身で使う納豆を選んでください。
使う納豆が決まったら蓋を取ってフィルムや醤油やからしを避けて納豆を混ぜます。ある程度混ぜたら水を少しずつ入れてパックの中で納豆水を作ります。納豆水ができたら容器の米ぬかに広げるように投入します。パックを見るとまだ納豆でヌメっていると思いますので2回目・3回目と続けて納豆水を作って米ぬかに投入します。私は4回~5回ほど繰り返しています。
納豆水と書いていますが豆も一緒に入れてしまいましょう。豆にも納豆菌が付着していますので入れない理由がありません。
納豆水ですが、お椀のような入れ物を準備しておくと作業が楽になります。お椀に納豆1パックと水1カップを入れて納豆水を作るとやりやすいです。(パックの方も何度か水を入れて流す方が良いですね)
納豆水を入れ終わったら最後に「水」を入れます。水の分量として米ぬか5㎏に対して水1Lくらいを目安にしましょう。米ぬかが10㎏なら水は2L、米ぬか15㎏なら水は3Lと言うように調整してください。
納豆ボカシができるまで
記事で紹介している納豆ボカシは2月下旬に作ったものです。この時期は気温が低く初期発酵の手助けをする必要があります。
初期発酵の手助けとは発酵に適した温度まで上昇させてあげることで、先ほども書きましたが納豆菌の適温は高めです。最初に適温にしておくと増殖スピードも速く、成功確率・完成時間も早まります。やり方としてはお湯を入れたペットボトルを米ぬかに埋めます。これが一番簡単でした。他には使い捨てカイロを温めてラップでくるんで入れたりもしましたが少し手間でした。
夏場は気温が高いのでお湯ペットボトルは不要ですが、春・秋・冬はあると心強いです。
米ぬかにペットボトルを埋めてボカシ作りスタートです。と言ってもやることは1日1回以上米ぬかを混ぜるだけです。米ぬかは好気性菌で酸素を好みますので切り返しはしっかりと行います。切り返したら容器の蓋は閉めずにタオルや毛布をかぶせておきます。
保温を考えると毛布の方をおすすめしますが私は不要になったタオルをよく使います。タオルや毛布よりも初期発酵の方が重要ですのでそちらは確実に行うようにしてください。
※私は1日1回の切り返しを行いましたが、他の方が作っている納豆ボカシでは1日2回の切り返しをされていました。どちらでも作れますので時間があれば2回でも良さそうですね。
ボカシ作りを始めて1日後、1回目の切り返しをしました。(納豆水と水入れて混ぜた後、1日後の切り返し)発酵は進んでいるか温度を計ってみました。
初期発酵のペットボトルから離れた位置の下層に温度計を刺しました。温度は約40℃でたった1日でここまで熱量が出ます。(中心部分は70℃程度でした)
写真の見た目として米ぬかが水で固まっただけのように見えますが、においは納豆と醤油の中間のようになっていました。嫌なにおいではなく、個人的には美味しそうなにおいでした。
完成までの変化としては甘いようなにおいが納豆臭に変化し、そこから醤油のようなにおいになり、醤油なのか?のようになれば完成です。(曖昧な表現ですいません。この表現を参考にしていただくか期間で完成とするかのざっくり判断で大丈夫だと思います)完成までは1週間ほどです。
1週間ほどで温度は40℃以下に落ち着くと思いますのでそこを目安にしてください。今回の場合では1週間後の温度は30℃程度でした。
ちなみに初期発酵用に置いたお湯入りペットボトルですが、私は3日目か4日目あたりに使うようにしています。冷めた水になっていますが、これを入れるともう一度熱が上昇します。
水を入れた1日後に温度を計ると44℃でした。外気温が5℃だったのでとても熱く感じました。
納豆ボカシのトッピング
私が作る納豆ボカシですが、実は隠れたトッピングがあります。
それは万能のインスタント堆肥の素「コーランネオ」です。過去から雑草堆肥作りに追加したり踏み込み温床作りに追加したりしている個人的オススメアイテムです。
コーランネオの主成分は米ぬかで、ここに加えてアミノ酸などの菌・微生物が好むものが配合されています。つまり菌達にとっては極上のエサになります。このコーランネオを100g程度トッピングして納豆ボカシ作りをしています。100gは私がこのくらいかな?と思って入れているだけでコーランネオの成分的にどれだけ入れても問題ありません。興味があれば商品リンクを貼っておきますので詳細を確認してみてください。
踏み込み温床や雑草堆肥作りで使用していると書きましたが、先ほど踏み込み温床作りの記事を紹介しているので、ここでは雑草堆肥の紹介をしておきます。
雑草堆肥とは言葉通りで雑草を堆肥化する取り組みです。草むしりした雑草を肥料袋に入れて1年放置した雑草堆肥作りや果樹園の端に区画を作って雑草を積み上げモミガラや土を配合した雑草堆肥作りなどを行いました。雑草からは窒素成分のある堆肥が作れますのでオススメです。考え方としてはマメ科の植物を土壌改良剤として植えてすき込むのと近いのかもしれませんね。
雑草堆肥についてはこちらの記事で紹介していますので興味があれば記事を読んでみてください。
まとめ
納豆ボカシ作りはいかがでしたか?簡単材料ですぐに作れますので特に農業初心者の方は経験として即実践してほしいと思います。
今回作った納豆ボカシは柑橘エリアに使い、容器が空になったのでそのまま次の納豆ボカシ作りに入りました。容器は洗ったりせずそのまま米ぬかと納豆水とコーランネオ、そして初期発酵のお湯ペットボトルを入れてボカシ作り開始です。
ちなみにうちの農園は個人農家にしては規模が大きめですがこの納豆ボカシは100サイズ・120サイズのトロ箱でしか作っていません。もっとたくさんの米ぬかで作ることもできますが、これくらいが負担にならずにやりたいときにできるレベルだと気に入っています。
個人農家は自由の幅が広いですからやりたいようにのびのびやってます(笑)
今後も簡単なネタや役立つネタがあれば記事として発信していきます。
今回も最後まで読んで頂き感謝です。
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