こんにちは!管理人のすのうです。
今回のテーマは「アスパラ農家」です。アスパラ農家になって驚いたことを紹介していきます。要はアスパラ農家ってこうだと思っていた!的なやつです。
いやお前、研修生だから。
まぁ、現状はアスパラ農家の研修生2年目で正式には私はアスパラ農家ではありませんが、気持ちは負けていません!と言うことで「アスパラ農家になって驚いたこと」を記事にしていきます。
アスパラ農家になって驚いたこと
アスパラ収穫
最初はアスパラの収穫です。私はアスパラ収穫とはこのような状態がメインだと思っていました。
~アスパラ農家とはこうだと思っていた~
アスパラがニョキニョキ出てきて収穫サイズになったらハサミで切る。ストレスなく収穫の達成感を味わえると思っていました。
~アスパラ農家の現実~
アスパラの森です。アスパラは根(貯蔵根)に養分を蓄え、その養分を使って萌芽(ほうが)します。根に養分を蓄えさせるためにはアスパラを木にして光合成させる必要があります。これを立茎(りっけい)と言います。
※萌芽とは芽が出てくることです。
アスパラの長期収穫のメインはこの立茎状態になります。
親茎(アスパラの木)と若茎(収穫アスパラ)があり、親茎を避けながら若茎を収穫していきます。
ちなみに立茎ハウスでの収穫視点はこんな感じです。
不要な下枝をカットする「整枝」作業により視界は多少ひらけますが定期的に行わないと視界は悪化します。
アスパラ収穫の解説
アスパラ収穫は「春」と「夏・秋」に分けられます。春の収穫は写真のようにアスパラの若茎が出ている状態で収穫しやすいです。この「春」アスパラの収穫は30日ほどでこれを過ぎると徐々に立茎準備をしていきます。立茎以降は「夏」アスパラが始まります。
収穫できるサイズかどうかだけ考えれば良い「春」アスパラは精神的に楽です。
春アスパラの期間が終われば立茎して夏アスパラが始まります。夏アスパラ~秋アスパラの収穫期間が長く、やろうと思えば10月頃まで収穫を続けられます。もふもふ農園では梨の収穫シーズンと重なるため8月中旬~9月上旬あたりには収穫をやめています。
それでも立茎状態での収穫は長期間に及び春の4倍ほどの長さです。アスパラ収穫の基本は立茎状態と言えます。アスパラの木や枝が繁茂しとても見難く収穫が大変です。慣れるまでストレスが半端なかったです(笑)
しゃがんだり、中腰になったりして収穫できるアスパラを探します。1ハウスや数ハウスなら持ちこたえられますがハウス数が多い場合、次の日は筋肉痛コースです(笑)
アスパラ収穫にギャップあり。
規格外アスパラが多い
野菜や果物を栽培していると出荷できない規格品、つまり「規格外」が必ず出てきます。ニンジンの二股や玉ねぎの小玉など「見た目」や「重量」などの規格を満たさないものを規格外と呼ぶことが多いです。
アスパラも規格外が出てきます。これから少し紹介していきますが、最初に発見したときは驚きました。
~アスパラ農家はこうだと思っていた~
規格外が出るのは分かっていました。私が思っていたアスパラの規格外とは細すぎるアスパラいわゆる「極細アスパラ」でした。食卓に極細アスパラがよく並んでいたため、規格外品なのだと思っていました。
わけありアスパラとして販売もしていますが一応規格外品です。ちなみにこの極細アスパラは美味しいですよ。お子さんがアスパラ嫌いでも極細アスパラだとバクバク食べた!と言う話をよく聞きます。通常のアスパラより安いためお得です。
規格外はこの極細ぐらいだと思っていました。
~アスパラ農家の現実~
実際に収穫すると規格外がよく出てきます。多少の規格外品は先ほどの極細同様に「わけあり」で販売していますが、中には「わけあり」でも販売できないほどの規格外があります。
例えばこれですね。「帯化茎」と言って帯状に広がった扁平アスパラです。特に夏場の高温によって発生するため「高温障害」の一種と言われています。このように形が歪で通常のアスパラとはかけ離れた規格外があります。
私はこのようなアスパラを見つけたら「異形のアスパラ」と呼んでいます。アスパラ農家ならたまにみる光景ですが普通の人は驚く光景です。
もう少し異形のアスパラを知りたい人向けに記事を投稿しています。変なアスパラを知りたい場合はこの記事がおすすめです。私のお気に入り投稿記事です。
規格外アスパラの解説
気温の高い夏場は規格外アスパラの比率も増えていきます。出荷できる範囲の規格外で代表的なものは軽度の曲がりです。アスパラが真っすぐ伸びずに少し曲がって伸びてしまいます。加えて多少の扁平も増えてきます。
もふもふ農園から支給されたアスパラです。曲がりや扁平・大きな筋が入ったものなどがあります。「わけあり」として販売することもありますが、量が多い場合は太めのアスパラであっても気前よくもらえます。
この規格外アスパラは収穫したアスパラの1割ほどを占めることもあります。高温障害・水分不足・栄養不足など原因はいくつかありますが気温の高い夏場は規格外が多いです。
アスパラ農家の朝は早い
アスパラ農家の朝は早いです。アスパラ収穫をして選別作業をして直売所や農協などに出荷する。やることがたくさんあり、新鮮なアスパラを販売するために努力しているのだ!と思っていましたが、半分正解で半分間違いでした。早朝から作業するのは自分たちのためでもありました。
~アスパラ農家はこうだと思っていた~
父や祖父の姿を見ていて、アスパラ農家は朝が早いと知っていました。それは朝早くから作業することにより後を楽にするからだと思っていました。
もし、私がアスパラ農家になったら朝の10:00あたりからゆっくり収穫をして選別して昼過ぎぐらいに出荷するのに、と思ったこともあります。
しっかり睡眠をとって時間に追われず作業する。スローライフを想像していました。
~アスパラ農家の現実~
そもそもアスパラハウスの暑さを軽視していました。夏場のビニールハウスの温度は40℃を軽く超して作業できる環境ではありません。加えてもふもふ農園では収穫できるアスパラハウスが14棟あり、早朝から収穫しないと気温が上昇して作業できなくなってしまいます。
うちの作業開始時間ですが、5月ごろから早朝5:00には収穫を開始しています。防除をする場合や収穫量が多い場合には4:30頃から収穫することもあります。
明るくなってきたら作業開始です。気温が上昇したら作業はできません。夏場のアスパラハウスは入らない!これが原則となります。
カラッと晴れた日、ハウスの温度はかるく40℃を超します。夏前の6月ですら40℃を超していました。短時間の作業で仕方なくハウスに入ると1分もせず汗が吹き出します。10分で汗だく、15分でくらくらしてきます。熱中症や脱水症状の危険性もあるため、夏場はアスパラハウスに入らないようにしています。
早朝作業の解説
アスパラは鮮度が命の野菜です。特に高温状態では短時間でも著しく鮮度が低下していきます。気温の高いときに収穫して放置していると品質低下を招くため注意が必要です。
出荷の効率を考えても、早朝に収穫して選別・出荷した方がより新鮮な状態で流通させることができますので全体最適を考えても早朝作業が良いと言えます。(夕方に収穫して翌日出荷する場合もあります)
鮮度維持の対策も必須です。収穫したアスパラはたっぷり水をかけて温度を下げ、保冷庫で出荷まで保存します。鮮度維持対策をしたアスパラはみずみずしく美味しい状態を保てます。このひと手間が美味しさの分かれ道です。
もふもふ農園では早朝は5:00頃・夕方は16:00頃から約2時間半の収穫作業を行っています。アスパラ農家の朝は早いのには理由があります。
アスパラの病害/病害虫が多い
アスパラ栽培では「防除」が重要になります。防除とは栽培する野菜や果物が病気にならないように、また虫の被害を受けないために薬剤などを散布することを言います。
もふもふ農園でも定期的にスプレーガンを用いて防除を行っています。
~アスパラ農家はこうだと思っていた~
アスパラはしっかりした茎ですので虫なんか出ないだろう。と甘い考えでした。虫は付かない病気も出ない。甘い考えでしたね。
農業に携わる今はそんな訳ない!と分かりますが最初、アスパラは管理が楽で栽培しやすいと思っていました。
~アスパラ農家の現実~
茎枯れ病などの病害は出る。スリップスなどの病害虫は出る。予防にも・発生した病害虫の駆除にも「防除」が必要です。被害が出ても放置しているとハウス全体にまん延して収量の低下や翌年以降にも被害が出てしまいます。
くさび形が特徴の茎枯病は発見が遅れると胞子が飛び、次々に感染を広げていきます。症状が進行するとその名の通り茎が枯れてスカスカになってしまいます。
スリップスと呼ばれる病害虫の被害もあります。アスパラの穂先に隠れて汁を吸って成長します。このスリップス(ネギアザミウマ類)は体調1㎜ほどのとても小さいシラミのような見た目ですので発見しにくい厄介な病害虫です。汁を吸われたアスパラは固くなり食味が大きく損なわれます。販売できないレベルです。
病害/病害虫の解説
病害虫ではスリップス以外にも「ヨトウムシ」の被害が多いです。私はヨトウムシが嫌いです。寒気がするほど嫌いです。ヨトウムシはいわゆる芋虫系で、アスパラの若茎に食害痕を残します。特に涼しくなってくる秋前に目立ち、立茎した親茎や若茎にもついています。
寒気がするほどですのでもちろん写真は撮っていません。私が正式にアスパラ農家を継いだらヨトウムシ対策は徹底的にやろうと思っています。
病害/病害虫対策に「防除」は必須ですが、最近では薬品を使わない防除も取り入れています。いろいろ試している最中ですので確実な効果が得られれば今後記事にして紹介していきます。
病害茎はハウスから出して焼却処分する必要があります。理由としては病害茎に菌が付着しており、そのままハウス内に放置していると二次感染に繋がるからです。ハウス量が多いと見まわるだけでも一苦労です。普段の収穫をしながらある程度、病害茎を把握して一気に処理しています。
夏場でも完全防備
気温が30℃以上アスパラハウス内が40℃以上の高温状態でも完全防備する必要があります。
この「もふもふ」が厄介です。この後に解説しますが完全防備でアスパラハウスに挑みます。
~アスパラ農家はこうだと思っていた~
夏は暑いので快適な服装(タンクトップやサンダル)で作業して良いと思っていました。今思うと甘い考えですね(笑)夏の日差しには帽子、同様に日焼けしすぎないように長袖や首タオルが必要です。
快適な服装でアスパラ収穫を行ってもよいと思っていました。
~アスパラ農家の現実~
特に夏場の立茎ハウスでアスパラ収穫をする場合、長袖必須となります。
アスパラのもふもふ(葉)が厄介で、素肌に擦れると発疹ができたり痒くなったりします。
私はアスパラ収穫の研修初期に半袖で作業したことがあります。数時間の作業でしたが、手首から肩付近まで痒くなり発疹ができていました。完全防備が大切です。
完全防備の解説
私がアスパラハウスで作業する時は帽子・上下長袖作業服(下は半袖Tシャツ)・長靴・軍手で完全防備しています。
作業服にファンが付いた「空調服」や速乾性や冷感性のある「冷感シャツ」が活躍します。
ベテランアスパラ農家さんの中には収穫台車を改造して「傘のついたて」を追加したり「大型扇風機」を追加したりして快適に収穫できるように改善している場合もあります。
良いものは取り入れて「もふもふ農園」のアスパラ収穫も快適にしていきたいです。
想像以上に若茎が成長する
アスパラの成長速度はすさまじいです。早朝と夕方の1日2回の収穫を行いますが想像していたよりも伸びます。
~アスパラ農家はこうだと思っていた~
アスパラがゆっくり成長して少しずつ収穫していくと思っていました。1度収穫したらそこはアスパラが生えない。言わば1本のアスパラに1つの根だと思っていました。
最初はアスパラの根がどうなっているかなんて考えたこともありませんでした。
~アスパラ農家の現実~
早朝と夕方の2回収穫をしないと追いつきません(笑)
早朝と夕方、各30㎏以上収穫しても次の日同じ量が収穫できます。アスパラの根は1m以上のとても大きな根です。大きな根にたっぷり養分を蓄えて次々にアスパラの芽を出していきます。
ちなみに早朝か夕方のどちらかの収穫をサボると…
めっちゃ伸びます(笑)このアスパラで60㎝ほどの長さです。うちの収穫規定サイズは27㎝以上ですので余分な部分をカットする必要があり養分の無駄使いになります。アスパラの根(貯蔵根の養分)に負担をかけず効率的に収穫するには1日2回の収穫が必要になります。
若茎の成長解説
アスパラガスは1日に14㎝ほど伸びると言われています。放置するとあっという間に成長して木(親茎)になります。数日収穫をサボるとほとんどの若茎が親茎になり新しいアスパラは出てきません。
そのためアスパラの収穫シーズンは「毎日」収穫するのが基本です。平日はもちろん休日も休みなしで収穫する必要があります。春アスパラの収穫開始は3月下旬から4月上旬ごろですのでそこから長期収穫スタイルで150日以上は収穫期間があります。個人でアスパラ農家をするなら知っておきたいポイントですね。
収穫には疲労もありますが、達成感もすごいです。直売所や農協や飲食店など販売ルートをいくつも持っておくと後々いいと思います。
まとめ
アスパラ農家になると最初は驚きの連続でした。特に「異形のアスパラ」は二度見するほどです。今でも超扁平なアスパラを見つけると写真を撮ってしまいます。
やればやるほどアスパラ農家は大変だと改めて思います。しかし、楽しさも多く感じています。収穫して出荷する楽しさやアスパラキャップを自作して「ホワイトアスパラ」を作ってみたり、支給されたアスパラを使って料理をしたり。日々充実しています。
グリーンアスパラからホワイトアスパラが作れる。これも驚いたことの一つですね。ホワイトアスパラは品種ではなく、栽培方法によって作れることを知りました。
アスパラ栽培はまだまだ知らないことが多くありそうです。日々勉強をして、多くの知識と多くの経験を積んでいきます。
今回も最後まで読んでいただき感謝です。
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